Keiko N. 妊婦エッセイ

地下鉄およびJRにおける
優先席の利用状況について

ちょっと前までシルバーシートと呼ばれていた「優先席」を知らない人は、おそらく東京にはもういないだろうと思われる。
ほとんどの車両の一番端っこに用意されていて、シートの色や、柄が普通のシートと違っていたりする。丸いロゴマークがシートの柄になっていたりするし、窓にはサインがはっきりと書かれていて、ご丁寧にイラストがあるものもある。
最近はメッセージもはっきりしていて「席を譲ってください。この席を必要としている人がいます。」などと書かれていたりする。結構強気だ。

使用できるのは「障害者/高齢者/けが人/赤ん坊を抱いた人/妊婦」ということになっている。

今、自分がこのカテゴリーに入らないとしても、将来、ほとんどの人は、どれかになる確率「大」である。その事実にあなたは気がついているだろうか?

ここではっきり聞きたい質問その1:
「あなたは電車で席を譲ったことがありますか?」

自慢にもならないが、私は学生時代から結構せっせと席を譲ってきた。
にこりともせずに座る人もいれば、ひどく丁寧に何度も何度もお礼を言ってくれた人もいた。 妙に気恥ずかしい気もするが、基本的に気持ちの良い行為である。

ここではっきり聞きたい質問その2:
「あなたは優先席が空いていたら座りますか?」

私は大概避けてきた。よほどがら空きでないかぎり座らずに来た。
でも、世の中の大半の人は上記の質問1には「いいえ」と答え、質問2には「はい」と答えるんだと、妊婦になってから気がついた。

最近私は意識して優先席の前に立つようになった。 優先席ならば少しは罪悪感なく座れるからだ。 普通の席の人に譲ってもらうのは気が引けるからだ。

席が空いた途端に争うように座る人々。気持ちはわかるよ。私だって座りたい。
だけれども、優先席に疑問もなくどかっと座れるおばさんおじさんにーちゃんねーちゃん・・・あんたらに私は腹が立つようになった。

現在妊娠7ヶ月目後半の私のお腹はかなり目立ってきている。
そりゃ、服装によっては「こいつってデブ」で済んでしまうギリギリラインかもしれない。
しかし、優先席に座った人々は「大概気がついている」のだ。
根性の曲がった人は「あからさまにじろじろ見る」し、「慌てて寝たふり」する人も見た。あきれた。

今までに席を譲ってくれた人は3人。
1:40くらいの体の大きな、派手なスーツを来たヤクザ風のおじさん。
2:18くらいの今風のおねーちゃん。
3:35くらいの江東区図書館の本を読んでいた地味なお姉さん。

1の人はにこりともせず、立った後もそっぽを向いていたが、「すわんなよ」とドスの効いた声が優しかった。
2の人は「あの、座ってください。」と恥ずかしそうに言った。
3の人にいたっては「気がつかなくてすみません。」とあやまられた。

優先席と、わざわざ表示しなければいけない日本という国の文化を嘆くとともに、この文化に疑問を持たない人々に恐怖を感じます。

みんな座りたいのは同じです。
でも、目の前が空いたとき、自分が座っているとき、ちょっとばかり周りを見回してみる心の余裕は、人を少しだけ、人間らしくしてくれると思いませんか?